フィギュアダッシュ:ダッシュで整列!


ハイフン「-」はご存知だと思いますが、それと同様の水平な線状の記号はほかにダッシュがあります。ダッシュには、エヌダッシュ・エムダッシュなど長さの異なるいくつかの種類があります。「僭越ながら:日本語の名残のあるスペック(1)」という記事を書いている時に、「フィギュアダッシュ」を使っている例に遭遇しました。あまりなじみがなかったので、ちょっと調べてみました。

おことわり:本稿は、「僭越ながら:日本語の名残のあるスペック(1)」と内容の一部が重複しています。


目次

  1. 「ダッシュ」の種類
  2. 「フィギュア」の意味は「数字」
  3. 「数字と同じ幅」とは
  4. 使い方がよくわからない

1. 「ダッシュ」の種類

Wikipediaの「dash」の項には、次のような説明があります。

. . . . The dash is a punctuation mark that is similar in appearance to a hyphen or minus sign, but differs from both of these symbols primarily in length and function. The most common versions of the dash are the en dash (–) and the longer em dash (—) . . .

【訳】(…前略…)ダッシュは、見た目がハイフンやマイナス符号に似ているが、長さと機能がいずれとも異なる句読点である。もっとも一般的なダッシュはエヌダッシュ「–」とエムダッシュ「—」である。(…以下略…)

【出典】Wikipedia contributors. “Dash.” Wikipedia, The Free Encyclopedia. Wikipedia, The Free Encyclopedia, 21 Nov. 2017. Web. 22 Nov. 2017.

また、主なダッシュとして次の5種類が挙げられています。

  • figure dash(フィギュアダッシュ)
  • en dash(エヌダッシュ)
  • em dash(エムダッシュ)
  • horizontal bar(ホリゾンタルバー・水平バー)
  • swung dash(スワングダッシュ)

ほかに上記ほど一般的でない記号として「two-em dash(2エムダッシュ)」「three-em dash(3エムダッシュ)」が紹介されています。

フィギュアダッシュ-Wiki

【画像引用元】Wikipedia contributors. “Dash.” Wikipedia, The Free Encyclopedia. Wikipedia, The Free Encyclopedia, 21 Nov. 2017. Web. 22 Nov. 2017.

いくつかのフォントで「フィギュアダッシュ」「ハイフン」「マイナス符号」「エヌダッシュ」を比べてみました。フォントによっては「フィギュアダッシュ」は提供されていません。

フィギュアダッシュ-1


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2. 「フィギュア」の意味は「数字」

さて、フィギュアダッシュ(figure dash)「‒」とは何でしょうか。

『シカゴマニュアル』『オックスフォード・スタイルマニュアル』には「figure dash」についての記述は見あたりません。見落としている可能性はありますが、少なくとも項目としては設けられておらず、索引にも含まれていません。

「Wikipedia」には次のような説明があります。

The figure dash (‒) is so named because it is the same width as a digit, . . . The figure dash is used within numbers (e.g. phone number 555‒0199), especially in columns for maintaining alignment. . . .

【訳】フィギュアダッシュ「‒」は、数字と同じ幅なので「フィギュア(=数字)ダッシュ」と呼ばれている。(…前略…)フィギュアダッシュは、「電話 555‒0199」などのように数字の中で使われる。特に、段組で縦の線を揃える時など。(…以下略…)

【出典】Wikipedia contributors. “Dash.” Wikipedia, The Free Encyclopedia. Wikipedia, The Free Encyclopedia, 13 Nov. 2017. (2017-11-14)

「フィギュア」(figure)は、キャラクターなどの人形を意味する単語と同じですが、ほかにも「図表」「人影」「スタイル」「数字」など様々な意味を持ちます。

「フィギュアダッシュ」の「フィギュア」は「数字」の意味で使われています。あえて訳せば「数字ダッシュ」でしょう。

『シカゴマニュアル』(The Chicago Manual of Style)と『オックスフォード・スタイルマニュアル』(The Oxford Style Manual)については、このサイトの参考資料をご覧ください。


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3. 「数字と同じ幅」とは

「フィギュアダッシュ」が数字と関係しているらしいことはわかりました。では、「数字と同じ幅」とは具体的にどのようなことでしょう。

下の図は、数字とフィギュアダッシュ・ハイフン・マイナス符号を比べてみたものです。

「フィギュアダッシュ」が準備されていないフォントが結構あったのですが、それは除いています。

「Courier」は、もともと等幅(モノタイプ)のフォントなので当然として、プロポーショナルフォントにも、ウィキペディアに書かれているように、フィギュアダッシュと数字が同じ幅(同じ字間)になっているものがあります。

下の図では、「Helvetica Neue」[1]を除くプロポーショナルフォントで、フィギュアダッシュと数字が同じ幅(同じ字間)のように見えます。

フィギュアダッシュ-2

次に、フィギュアダッシュとハイフンの挿入位置と挿入数を変えて比べてみました。

ハイフンを使っている方は、等幅フォントの「Courier」以外は、ハイフンが増えるごとに縦の線(アラインメント)が不揃いになっていきます。

一方、フィギュアダッシュを使っている方は、「Helvetica Neue」を除いて、プロポーショナルフォントでも縦の線が揃っています。

ただ、「Palatino」と「Times New Roman」は、数字の「1」だけ他の数字よりも幅が狭いために、縦の線を完全に揃えるには「1」の前後でカーニングが必要でしょう。

フィギュアダッシュ-3


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4. 使い方がよくわからない

プロポーショナルフォントで電話番号などのリストを作るとき、ハイフンだとアラインメントが揃わない場合にフィギュアダッシュを使う、ということがウィキペディアに書かれています。

リストの桁の位置を揃えたくなりそうな例として、シリアルナンバーがあります。そこで、アルファベットを混ぜて比べてみました。

フィギュアダッシュ-4

プロポーショナルフォントは文字ごとに幅が異なるので、縦の線が揃うことはありません。「フィギュアダッシュ」を使うか「ハイフン」を使うか、という問題ではなくなります。

どうしてもプロポーショナルフォントでアラインメントを揃える場合は、1文字ごとにタブを設定する、という方法もあるかもしれません。しかし、等幅(モノスペース)フォントを使う方が合理的でしょう。

結局のところ、「フィギュアダッシュ」の用途はその名のとおり、数字との組み合わせに限定されるようです。

電話番号リストの縦の線を揃えたい場合は、等幅(モノスペース)フォントを使う、という選択肢もあるので、「フィギュアダッシュ」に関しては、とりあえず知識として覚えておくだけでいいのかもしれません。


[1] 今回は「Helvetica Neue」の「Regular」で比較しました。「Regular」「Bold」の「フィギュアダッシュ」はハイフンと同程度の短さですが、「Light」「Thin」などでは「エムダッシュ」のように比較的長めになっています。

お読みいただきありがとうございます。気が向いたらまた遊びに来てください。

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