米語と英語では、「color」と「colour」など、スペリングの違い以外にも、単語の使い方自体が異なる場合があります。エレベーターは米国では「elevator」で英国では「lift」が一般的です。このような違いを、アップル社MacBook Proのスペックにも見ることができます。
【前回の投稿はこちら】ところ変われば:Appleの場合(5)
目次
アップル社のMacBook Proの同一モデルのスペック表記が、国・地域によって少しずつ異なっているので、比べてみました。モデルは2017年6月発売のMacBook Pro 13インチです。製品スペック自体は同じなのですが、市場に応じてスペック値の表記の仕方や文章スタイルに違いが見られます。
次の4地域向けサイトの仕様ページ(Tech Specs)を比べました。
- アメリカ合衆国 – https://www.apple.com/macbook-pro/specs/
- 英国 – https://www.apple.com/uk/macbook-pro/specs/
- オーストラリア – https://www.apple.com/au/macbook-pro/specs/
- 香港 – https://www.apple.com/hk/en/macbook-pro/specs/
「Battery and Power」(バッテリーと電源)の項目を見てみましょう。市場によって表記が異なる箇所にマーカーを引きました。
アメリカ合衆国サイト
英国サイト
オーストラリアサイト・香港サイトのこの項目は、アメリカ合衆国サイトと同じなので今回は省略しました。
1. 英語と米語の単語の違い
M の部分を見てみましょう。バッテリーの寿命の目安のひとつとして「最大10時間のiTunesムービーの再生」と例示してる箇所です。アメリカ合衆国・オーストラリア・香港のサイトは「movie」であるのに対し、英国サイトは「film」となっています。
『Cambridge Dictionary』で「movie」を引くと、主に米国で使われ、英国では通常「film」が使われるという意味の記述があります。
Cambridge University Press, Cambridge Dictionary, “movie” (accessed August 27, 2017).
アメリカ合衆国と英国で、同じものの名前が違う例をあげてみます。
米語 | 英語 | 意味 |
---|---|---|
fall | autumn | 秋 |
apartment | flat | アパート |
elevator | lift | エレベーター |
paper towel | kitchen paper | 紙タオル |
cookie | biscuit | クッキー |
subway | underground | 地下鉄 |
【参考】TABIPPO.NET [タビッポ] 『アメリカ英語とイギリス英語で異なる単語まとめ』 (2017-8-27)
また、同じ単語の意味が米国と英国で異なる例です。
単語 | 米国での意味 | 英国での意味 |
---|---|---|
pants | ズボン | 下着 |
chips | ポテトチップス | フライドポテト |
first floor | 1階 | 2階 |
trolley | 路面電車 | ショッピングカート |
suspenders | サスペンダー | ガーターベルト |
football | アメフト | サッカー |
【参考】オンライン英会話コラム 『アメリカ英語とイギリス英語で意味がかなり違う英単語【30連発】』 (2017-8-27)
2. iTunes film? iTunes movie?
「映画」を英国(とイギリス連邦の国々)で「film」と言いますが、はたして「iTunes movie」を「iTune film」と言うのか、という疑問を抱きました。そこで英国サイトのiTunesのページを見てみると、iTunesの「Browse」(日本語版では『見つける』)画面のスクリーンキャプチャに、「TV & Films」と表示されていました。米国版では「TV & Movies」と表示されている箇所です。
上が米国サイトで下が英国サイトの画面です。この画像は米国サイトのiTunesページに掲載されているスクリーンキャプチャと英国サイトのiTunes画像をSpecAidが合成しました。
ついでに、同じページの見出しも比べてみましょう。上が米国サイトで下が英国サイトです。
米国サイト
英国サイト
下記の3箇所に違いが見られます。
米国サイト | 英国サイト | 違い |
---|---|---|
movies | films | 単語 |
TV shows | TV programmes | 単語・スペリング |
center | centre | スペリング |
なお、映画作品については、米国で「movie」、英国で「film」を使う傾向にありますが、「映画産業」という意味の英語は、米国でも「film industry」といい、「movie industry」とはあまり言わないようです。「movie」と「film」の使い方は、国・地域による違いだけではなく、使われる分野や作品の芸術性・ニュアンス、など様々な理由で使い分けられているようです。同様の意味では他に「cinema」「motion picture」などに単語もあります。
English Language & Usage Stack Exchange, ‘Difference between “movie”, “film” and “motion picture”’ (accessed August 27, 2017)