3×4か4×3か

世界共通だろうと思い込んでいることに、国や地域による習慣の違いが潜んでいることがあります。今回は、小学校で学ぶ掛け算をその一例としてご紹介します。例えば「3 × 4」に英語と日本語の違いがあるのかどうかというお話です。


目次

  1. 掛け算の説明の仕方
  2. 英語の読み方
  3. 順序にまつわる論議

掛け算の説明の仕方

掛け算の考え方を説明するときに、このような例をよく使います。

【問題】ケーキが3個載った皿が全部で4皿あります。ケーキは全部でいくつあるでしょう。

ケーキ3個が4皿

これを式にするときは、[ケーキ3個]が[4皿]なので、「3×4」とします。つまり「ケーキ3個」というグループが、全部で4グループ(=4倍)、という考え方が一般的だと思います。

ところが英語では順番が変わることがあります。このように図を使って掛け算の基本的な考え方を説明するとき、[ケーキ3個]が[4皿]ではなく、[4皿]の[ケーキ3個]となります。これを式にすると、「4 × 3」となります。

【日本語の考え方】

  • ケーキ3個が4グループ
  • 3かける4
  • 3×4

【英語の考え方】

  • four groups of three cakes[1]
  • 4 times 3
  • 4 × 3

掛け算の順番の違い

数学者Keith Devlin氏の文章に下記のような記述が見られます。

. . . . With multiplication you have a multiplicand (written second) multiplied by a multiplier (written first). . . . For example, if you have 3 bags each containing 5 apples, then you can multiply to give
[3 BAGS] x [5 APPLES PER BAG] = 15 APPLES . . .

【訳】(…前略…)乗法では(2番目に書かれる)被乗数に(1番目に書かれる)乗数を掛けます。(…中略…)例えば、それぞれ5個のリンゴの入った袋が3つある場合、次のように計算します。
[3袋]×[リンゴ5個/袋]=リンゴ15個
(…以下略…)

Keith Devlin, “Devlin’s Angle, What Exactly is Multiplication?, (accessed August 2, 2017)

つまり、英語では一般的に、[乗数]×[被乗数]という順序で書く[2]、ということが述べられています。掛け算は乗法ともいいます。また「被乗数(multiplicand)」は「5に3を掛ける」という場合の「5」の方で、「乗数(multiplier)」は「3」の方です。乗数が「掛ける数」、被乗数が「掛けられる数」ということです。

Wikipediaの掛け算の項(Multiplication)などでも、[乗数]×[被乗数]という順序で解説されています。

図の引用元:Multiplication models lesson


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2. 掛け算の読み方

前項の「4 × 3」は「four times three」(フォー タイムズ スリー)と読みます。その他にも読み方が何通りかあります。

  • four times three
  • four groups of three
  • four copies of three
  • four lots of three
  • three multiplied by four

掛け算式の英語の読み方

かけ算九九で「しさんじゅうに」と覚えたように、英語では「four threes are twelve」という読み方もあるようです。


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3. 順序にまつわる論議

英語と日本語の「乗数」(掛ける数)と「被乗数」(掛けられる数)の順番が逆になっていることを、「1. 掛け算の説明の仕方」で紹介しました。英語圏では、「3 × 4」は「4 + 4 + 4」と同等である、と説明されることが多いようです[3]。一方、日本で掛け算の説明をするとき、「3 × 4」は「3 + 3 + 3 + 3」の意味である、と説明されることが多いと思います。

ですが、これはあくまでも掛け算の考え方の基本を説明する場合、と考えた方がよさそうです。

ご存知のように、掛け算の数字を前後入れ換えても答は同じです。

3 × 4 = 4 × 3 = 12

さらに、例えばタテヨコに整然と並べられた椅子の総数を知りたい場合など、「掛ける数」と「掛けられる数」を決めることに意味がない場合もあります。面積や体積・容積を求める場合も「乗数」「被乗数」を決めることはできません。このため、始めから「因数(factor)」という言葉を使った方がいいという立場もあります。

図の引用元:Pierce, Rod. (8 Sep 2015). “Definition of Multiplicand”. Math Is Fun. 2 Aug 2017

いったん掛け算の意味を理解して、かけ算九九をおぼえてから何年も経つと、あまり順番を気にせずに、3と4を掛けることだけに意識が向けられると思います。その時に、「3×4」とすべきか「4×3」とすべきか、などとは考えません。答さえ得られればよしとするでしょう。

つまりこの時、ケーキとか皿とか袋といった具体的な事物からはなれて、抽象化された「3」と「4」を扱っているからだろうと思います。

小学校の算数では、問題文の内容にしたがって「1つ分の数」×「いくつ分」と書かなければ「間違い」となることを知りませんでした。このことについて、周期的に論議が盛り上がっているようですので、興味のある方は下記参考サイトの4・5番目などをご覧ください。



[1] 「とても簡単」の意味の「a piece of cake」という表現があるので、「cake」は数えられない名詞かと思い、念のため調べてみました。例えば、ホールケーキを切り分けた場合は不可算名詞(uncountable)ですが、そうでない場合は可算名詞のようです。
【参考】Oxford Advanced Learner’s Dictionary at OxfordLearnersDictionaries.com

[2] 『英和辞典 Weblio辞書』の「multiplicationの意味」の項に「2×4=8 の時,2 を multiplicand (被乗数), 4 を multiplier (乗数), 8 を product (積)という」と解説されています。これは日本で算数を学んだ読者に向けての説明であるためと考えられます。

[3] 「3 × 4」を日本と同じく「3 + 3 + 3 + 3」とする場合もあるようです。
【参考】Oxford Advanced Learner’s Dictionary at OxfordLearnersDictionaries.com
また、インドのソフトウェア会社が運営している『Easycalculation.com』というサイトでは、[被乗数]×[乗数]という順序で説明しています。

お読みいただきありがとうございます。気が向いたらまた遊びに来てください。