括弧:カッコつけが多いと目障り(包むのは日本の文化だけど)


日本語の括弧「( )」は丸括弧・パーレンとも呼ばれます。パーレンは、英語のparenthesis「( )」と使い方は同じなのでしょうか。全角と半角ということ以外に何か違いはあるのでしょうか。スペックで括弧を使うときには、どのような点に注意すればいいのでしょう。


目次

  1. スタイルガイドに見る使い方
  2. 文中では使い過ぎに注意
  3. スペックでも適所に括弧を

『コトバンク』の『デジタル大辞泉』は、「まるがっこ」を、補足説明や省略可能などを表すのに用いる、と解説しています。

「丸括弧」『デジタル大辞泉』

【参考】コトバンク、デジタル大辞泉「丸括弧(マルガッコ)とは」(2017-11-29)

英語の辞書ではどのように説明しているでしょう。『Collins English Dictionary』には次のように記されています。

Parentheses are a pair of curved marks that you put around words or numbers to indicate that they are additional, separate, or less important.

【訳】「parentheses」(丸括弧・パーレン)は一対の円弧状の記号で、それに囲まれた言葉や数字が、追加的であること・切り離されていること・重要度が低いことなどを示す。

parenthesis - Collins English Dictionary

Collins English Dictionary, “Parenthesis definition and meaning” (2017-11-29).

上記の辞書2点を見る限りでは、日本語の「丸括弧」と英語の「parentheses」の使い方に、特に大きな違いはなさそうです。

※ ここから先は、英語の「parentheses」を「丸括弧」または「括弧」と表記します。

1. スタイルガイドに見る使い方

『シカゴマニュアル』の「Parenthesis」の項に挙げられている用途をざっくりとまとめると以下のとおりです。

  • a) コンマより強く、ダッシュと同程度に、前後の文から区切る
  • b) 注釈や翻訳を囲む
  • c) 文中で要素を列挙する時の番号・文字を囲む
  • d) 箇条書き・アウトラインの番号を囲む

【参考】
The Chicago Manual of Style, 16th Edition
(Chicago and London: The University of Chicago Press – 2010)(項目6.92–96)

a) コンマより強く、ダッシュと同程度に、前後の文から区切る

下記は、「ロンドンで休暇を過ごしていたサイモン・シュミットが木から降りられなくなった猫を救出した」という文に、サイモン・シュミットが「ニューヨークの消防士」であるという補足情報を、コンマ・ダッシュ・括弧の3とおりで挿入したものです。

コンマ
While on holiday in London, Simon Schmidt, a fireman from New York, rescued a cat from a tree.
ダッシュ
While on holiday in London, Simon Schmidt—a fireman from New York—rescued a cat from a tree.
括弧
While on holiday in London, Simon Schmidt (a fireman from New York) rescued a cat from a tree.

括弧・コンマ・ダッシュ

【例文引用元】www.grammar-monster.com, “Using commas for parenthesis” (2017-10-13)

3つの文の中では、コンマによる挿入句がもっとも文と一体化していて、流れが途切れません。[1]

ダッシュを使った挿入句は、流れを止める力が強く、「ニューヨークの消防士」であることの文中での意味合いが強調されます。ロンドンとニューヨークの対比が生まれます。[2]

括弧で挿入された情報は、文との関連性がほぼ失われ、「サイモン・シュミット」に対する注釈としてのみ機能します。[3] シュミット氏が「ニューヨークの消防士」であることを、読者にすぐに知ってもらう必要がなければ、以下のように脚注で示すという方法もあるでしょう。

While on holiday in London, Simon Schmidt* rescued a cat from a tree.
*A fireman from New York.

b) 注釈や翻訳を囲む

前述のように注釈・補足説明を添える場合や、次のように外国語のの訳を挿入する場合に括弧をつけるということです。下の例文は「München Hauptbahnhof」というドイツ語の英訳を括弧に入れています。

München Hauptbahnhof (Munich Main Railway Station) is one of the largest stations in Germany.

c) 文中で要素を列挙する時の番号・文字を囲む

数字やアルファベットを文中のリストにつける場合、(1) (2) (3)、 (a) (b) (c)という具合に括弧で囲みます。

The three elements of music are (1) rhythm, (2) melody, and (3) harmony.

d) 箇条書き・アウトラインの番号を囲む

『シカゴマニュアル』も『オックスフォード・スタイルマニュアル』も、リストやアウトラインの階層が複数のとき、下位の項目に対して括弧で囲む、としています。

  1. Africa
    • a) Northan Africa
      • (1) Algeria
      • (2) Egypt
      • (3) Libya
      • (4) Morocco
      • (5) Tunisia
    • b) Eastern Africa
      • (1) Burundi
      • (2) Comoros
        . . .

『オックスフォード・スタイルマニュアル』には、丸括弧の用途として、余談・説明・注釈・翻訳に加えて、略語の元の単語・補足情報・出典・参照・異なる綴りなどを示す場合にも使う、として以下の例を掲載しています。

用途
TLS (Times Literary Supplement) 略語の展開
£2 billion ($3.6 billion) 補足情報
a discussion of animal hibernation (see p. 61) 参照
lardy(-)cake (Oxfordshire Glossary Supplement, 1881) 異なる綴りと出典
Geoffrey Chaucer (1340–1400) 補足情報
gaulois(e) 異なる綴り

括弧:用途(The Oxford Style Manual)

R. M. Ritter, The Oxford Style Manual (Oxford: Oxford University Press – 2003)(項目5.11.1より引用)


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2. 文中では使いすぎに注意

スタイルガイドは、括弧の使いすぎに注意を促しています。

『オックスフォード・スタイルマニュアル』の「Parentheses」の項には次のような記述があります。

. . . . Ideally, writing should not rely solely on just one of these conventions, since each can become obtrusive through overuse. . . .

【訳】(…前略…)理想的には、これらの記法〔丸括弧・コンマ・ダッシュ〕のどれか一つだけに頼って書くべきではない。いずれであっても使いすぎると目障りになるからである。(…以下略…)

R. M. Ritter, The Oxford Style Manual (Oxford: Oxford University Press – 2003)(項目5.11.1)

『APスタイルブック』の丸括弧の項には次の記述があります。

. . . . The temptation to use parentheses is a clue that a sentence is becoming contorted. Try to write it another way. If a sentence must contain incidental material, then commas or two dashes are frequently more effective. Use these alternatives whenever possible. . . .

【訳】(…前略…)括弧を使いたい誘惑を感じたならば、それは文がゆがんできたことの現れである。そういうときは別の書き方を試みるべきだ。付帯的な内容を付け加えなければならないときは大抵、コンマやダッシュの方が効果的である。できる限り括弧の代わりにコンマかダッシュを使うのがよい。(…以下略…)

The Associated Press Stylebook and Briefing on Media Law 2017 (New York: Basic Books – 2017) (434ページ)


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3. スペックでも適所に括弧を

以上に述べてきたことは、文章中での括弧の使い方についてのガイドラインです。

では、スペックではどうでしょう。スペックは、メートル法とポンド・ヤード法の併記、略語、専門用語など、括弧を使わざるを得ない場面が本文以上に多いです。

だからこそ、括弧を使うべきか、括弧に入れるべき補足的要素なのか、他の表現はないか、などについて吟味すべきでしょう。気軽に使うと括弧だらけになりがちです。

括弧:スペックでの使用例

『The Global English Style Guide』というテクニカルライティングのスタイルガイドがあります。その「Parentheses」の項に記載されているルールの中から、スペックにも適用できそうな項目をピックアップしてみました(文例はアレンジしています)。

括弧が何を示しているのか読者にわかるようにする
a) 同義・同等のものを示す:例えば、「graphical user interface (GUI)」と書いた場合、「graphical user interface」と括弧内の「GUI」は同じものを示しています。「100 miles (161 kilometers)」は異なる単位で同じ長さを示しています。このように、ふたつのものが同等であるときに括弧を使います。
b) 別の選択肢には使わない:「wireless connection over Wi-Fi (Bluetooth)」のように、別の選択肢を示すときには括弧は使いません。「Wi-Fi」と「Bluetooth」は別のものなので「… either Wi-Fi or Bluetooth」などのように書きます。
c) 括弧内を「or」で始めない:例えば、「FireWire (or i.LINK)」とある場合、「FireWire」と「i.LINK」を知らない読者には、その二つが同じものの言い換えなのか、別のものなのかがわかりません。実際は、「IEEE 1394」という同じ規格に対して、アップル社とソニー社それぞれが付けた愛称です。このケースの解決法は長くなるので省略します。
必要のない括弧は取る
括弧を使うことで、文が短くなったり、読みやすくなったりしない場合は、括弧をなくします。また、括弧内の情報が補足的であるかが明確でない場合は、括弧は邪魔になるだけです。スペックで「360 g (without batteries)」という記述はよく目にしますが、これも必ず括弧に入れなければならないというわけではありません。「360 g (12.7 oz.) (without batteries)」のように括弧が続いて煩わしい時は、「360 g (12.7 oz.) without batteries」とするのがいいでしょう。

括弧:不要な括弧は使わない


John R. Kohl, The Global English Style Guide (Cary, NC, USA: SAS Institute Inc. – 2008)

『シカゴマニュアル』(The Chicago Manual of Style)、『オックスフォード・スタイルマニュアル』(The Oxford Style Manual)、『APスタイルブック』(The Associated Press Stylebook)については、このサイトの参考資料をご覧ください。


[1][2][3] コンマ・ダッシュ・括弧のニュアンスの違いは次のサイトを参考にしました。
Writers Stack Exchange, “Dashes vs. Commas vs. parentheses?” (2017-11-29), The Writing Center at MSU, “Dashes, and Commas, and Parenthesis, Oh My!” (2017-11-29), Grammar Quizzes, “Commas, Parentheses & Dashes” (2017-11-29)

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