不等号:スペックでは多かれ少なかれ使われています


スペックである性能を表すときに、数値に「以上」「以下」「超」「未満」を添えることが少なくありません。このような場合、英語では“or more” “or less” “more than” “less than” などが数値に添えられます。また、代わりに「≥」「≤」「>」「<」などの記号を使うこともあります。

不等号:スペックでは多かれ少なかれ使われています


目次

  1. 以上・以下・超・未満のおさらい
  2. 不等号の向きと意味
  3. HTMLで文字参照を使う

この記事は2018年5月31日に公開した内容に対し、7月21日に加筆・修正しました。「日常生活での『以て』は注意が必要」の項と「英語の『大なり/小なりイコール』は1本線が一般的」以降を追加しています。


数量範囲を示す時に、ある数値を基準点として、その基準点よりも大きい(または多い)ときに「以上」「超」、その基準点よりも小さい(または少ない)ときに「以下」「未満」を使います。英語で意図したとおりの表現をするには、どうすればいいかをまとめてみました。

「7超」「7未満」の使用例
【引用サイト】Bryston Limited: Music for a Generation, “BP_MPS2_B60_B100_DAC_BROCHURE.pdf” (2018-5-31)

1. 以上・以下・超・未満のおさらい

まず、「以上」「以下」「超」「未満」は何を示しているかを詳しく見ながら、その英語表現を確認していきましょう。


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「以上」「以下」は含む

「7以上」に「7」は含まれます。

7以上

また同様に「7以下」にも「7」は含まれます。

7以下


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“or”は含む

「以上」「以下」に相当する英語表現では“or”を使います。

「7以上」を表す時は、“seven or more”とします。「7またはそれよりも多い」といった意味になります。

seven or more

対象の項目に応じて、“more”以外にも“higher” “greater” “better”などが使われます。また、後から説明する「未満」を使って、「未満ではない」という言い方、“not less than”で「以上」を示す表現もあります。

  • seven or more
  • seven or higher
  • seven or greater
  • not less than seven

「7以上」の英語表現

ちなみに、本稿では、“seven”としていますが、必ずアラビア数字の“7”を使わなくてはいけない、ということではありません。企業や団体のスタイルガイドなどに基づいて適切な表記法を選択してください。

「7以下」を表す時は、“seven or less”とします。「7またはそれよりも少ない」といった意味になります。

seven or less

対象の項目に応じて、“less”以外にも“lower” “smaller”などが使われます。また、「以上」と同様に、「〜を超えない」という言い方、“not more than”で表現することもあります。

  • seven or less
  • seven or lower
  • seven or smaller
  • not less than seven

「7以下」の英語表現


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「超」「未満」は含まない

「7超」に「7」は含まれません。

下の図で白丸になっているのは、7を含まないことを表しています。「7超」といった場合、整数であれば、「8、9、10、11……」を意味します。

7超

「7を含まない7より大きい値」を表すので、小数の場合は、「7.1、7.2、7.3……7.8、7.9、8、8.1、8.2……」のように、8より小さい値も含まれます。また、計測の精度や有効値などの理由で小数点以下の桁数が異なれば、「7.01、7.02、7.03……」「7.001、7.002、7.003……」などのように、指し示す範囲が微妙に異なってきます。

「7超」という表現は見慣れないかもしれませんが、車両の区分などで「総排気量3,000cc超」などの記述は目にしたことがあると思います。または、「7kg超の大物を釣った」などの表現もそれほどめずらしくないのではないでしょうか。

また、「7未満」に「7」は含まれません。

「7未満」といった場合、整数であれば、「6、5、4、3……」と、「7を含まない7より小さい値」を意味します。小数の場合は、「6.9、6.8、6.7……」と6より大きな値も含まれます。

7未満


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“than”は含まない

「超」「未満」を英語で表すときは、“than”を使います。

more than seven

「7超」は“more than seven”または“greater than seven”となります。文章中では、“over”や“above”を使って“over seven” “above seven”と書かれることもありますが、「超」か「以上」かがあいまいなので、スペックでは使わないほうが賢明でしょう。

  • more than seven
  • greater than seven
  • over seven
  • above seven

「超」の英語表現

また、「7未満」は“less than seven”または“smaller than seven”と表現します。

less than seven

文章中で“under” “below”を使って“under seven” “below seven”と書かれることもありますが、こちらもあいまいさを避けるためにスペックでは使わない方がいいです。

  • less than seven
  • smaller than seven
  • under seven
  • below seven

「未満」の英語表現


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日常生活での「以て」は注意が必要

「以上」「以下」の「以」は、「以て」と書いて「もって」または「もちて」と読みます。この「以て」は「持ちて」から生まれた言葉で、手段・方法、原因・理由、事のおこなわれる時、区切り・限界などを示します。

【参考】コトバンク、デジタル大辞泉「以て(モチテ)とは」(2018-5-31)

たとえば「当社は10月1日を以て社名を変更いたします」とあれば、「社名変更」という「事がおこなわれる時」は10月1日です。つまり、10月1日を「含んで」、それ以降は新しい社名が使われます。

ところが、何かが終わる時を示す場合に「以て」が使われると、含むのか含まないのかがわかりにくくなります。たとえば「6月30日を以て閉店いたします」というとき、6月30日には営業しているのか不安になる人も多いかと思います。

この場合の「以て」は「区切り」を示しています。言いかえると、6月30日を「限り」に閉店する、という意味ですので、6月30日までは営業しているはずです。

話がいきなり横道にそれてしまっているようで申し訳ないですが、もう少し説明しますと、「6月30日午後8時を以て閉店します」とあれば、6月30日は午後8時までは営業しますし、午後8時を過ぎると「閉店状態」に移行することが明確になります。

【参考】教えて!goo、日本語「『6月2日をもって』は6月2日は入りますか?」(2018-5-31)


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2. 不等号の向きと意味

英語のスペックでは、「以上」「以下」「超」「未満」を算数の不等号記号を使って表すことが少なくありません。

不等号意味使用例
以上≥ 7(7以上)
以下≤ 7(7以下)
>> 7(7超)
<未満< 7(7未満)

不等号の使用例
【引用サイト】Klipsch, Speakers, Headphones & Home Audio “product-specsheets/PRO-200A-Spec-Sheet.pdf” (2018-5-31)

この不等号をスペックの中で使うときに、その向きをどちらにするのが正しいか迷うときがあります。そこで不等号の使い方の基本を確認してみましょう。

たいていの人は不等号の読み方を次のように習ったと思います。

不等号読み方
>大(だい)なり
<小(しょう)なり
大(だい)なりイコール
小(しょう)なりイコール
不等号読み方意味
a > bエー大なりビーaはbより大きい
a < bエー小なりビーaはbより小さい
b < aビー小なりエーbはaよりも小さい
(= aはbより大きい)

ふたつめの表にあるように、aがbよりも大きいことを数式で示すときは、[a][大なり不等号][b]とします。

この式の不等号を「小なり」と入れ替えて、[a][小なり不等号][b]とすると、aがbより小さいという意味になります。

さらに、この式の「a」と「b」を入れ替えて、[b][小なり不等号][a]とすると、bはaよりも小さい、という意味になります。これは当然ながら、aはbよりも大きいと言い換えることもできます。

要するに、不等号の開いている方が閉じている方よりも大きい、ということです。ですから、aがbよりも大きいことを示すときには、常にaを不等号の左側に置かなければならない、というわけではありません。不等号の読み方である「大なり」「小なり」(greater than, less than)にしばられなくてもよいのです。

では、ある項目の値が「7以下」であることを示すとき、どの記号を使えばいいのでしょうか。たとえば、消費電力が7ワット以下であることを不等号であらわすときは、以下のように考えます。

消費電力 ≦ 7W

ところが、スペックで最大値・最小値を不等号で示すときには、不等号の右側に数値が表示され、左側には(一見)なにもありません。「>7」「≤7」のように表記されます。とくに悩むこともなさそうですが、項目に「≦7W」とだけ書かれていると、以下なのか以上なのか一瞬わからなくなることが、恥ずかしながらわたしには時々あります。「≦7W」を誤って「7W以上」と読んでしまうのです。

スペック中の不等号


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英語の「大なり/小なりイコール」は1本線が一般的

中学校の数学では、等号付きの不等号は、2本の水平線の等号記号を等号の下に組み合わせたものを教えられます。欧米では1本の水平線または平行線との組み合わせの方が一般的のようです。英語のスペックでもそちらの方を多く見かけます。

欧米日本

等号付き不等号


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スペースを入れる時・入れない時

ところで、この記事の中でも不等号と数値の間にスペースがあったりなかったりしていることにお気づきかもしれません。

『シカゴマニュアル第16版』の「Style of Mathematical Expressions(数式の表現スタイル)」の項には、数式のスペースについて次の記述があります。

Basic spacing in mathematics. . . . Signs for binary operations (i.e., conjunctions); symbols of integration, summation, or union: and signs for binary relations (i.e., verbs) are preceded and followed by medium spaces: . . .

【訳】数学における基本的なスペーシング(…中略…)(接続詞的な)二項演算の記号、積分・総和・和集合の記号、(動詞的な)二項関係の記号は、その前後にミディアムスペースをともなう:(…以下略…)


The Chicago Manual of Style, 16th Edition
(Chicago and London: The University of Chicago Press – 2010) (項目12.16から抜粋)

二項演算には、足し算・引き算・掛け算・割り算なども含まれます。シンプルな数式では掛け算記号の前後にミディアムスペースが必要ということになります。『シカゴマニュアル』では、数式で使われる「ミディアムスペース(medium space)」は、エムスペースの4分の1幅[1]としています。

では、以下・以上・未満・超などを表すためにスペックで使われる場合に、不等号と数値の間にスペースが無いのはなぜでしょうか。

上述の『シカゴマニュアル』の同じ項には以下のような記述もあります。

. . . . No space follows a binary operation or relation sign when it is modifying a symbol (i.e., used as an adjective):
−1, +∞, ×5, <7,  . . .

【訳】(…前略…)演算記号や符号が数字や記号を修飾している(つまり形容詞として使われているとき)スペースは入れない。
−1, +∞, ×5, <7,
(…以下略…)


The Chicago Manual of Style, 16th Edition
(Chicago and London: The University of Chicago Press – 2010)(項目12.61)

つまり、プラス記号やマイナス記号のようにスペースを入れないという『シカゴマニュアル』と同様のルールに基づいているスペックが多いようです。

不等号にスペースが必要か

『シカゴマニュアル』(The Chicago Manual of Style)については、このサイトの参考資料をご覧ください。


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3. HTMLで文字参照を使う

HTML文書に記述する場合は、それぞれ以下の名前文字参照を入力します。

「&lt;」と「&gt;」の「l」「t」「g」はそれぞれ「less」「than」「greater」の頭文字です。また、「&le;」と「&ge;」の「e」はそれぞれ「equal」の頭文字です。

下の表にリストアップした不等号をすべて持っているフォントの数は限られています。特に等号付きの不等号に関しては、英語フォントのほとんどが2本線の等号は表示できません。逆に、日本語フォントは1本線の等号を表示できないものが多いです。

不等号文字参照
(名前・数値)
名称
<&lt;less than
&le;less than or equal to
&#10877;less than or slanted equal to
&#8806;less than over equal to
>&gt;greater than
&ge;greater than or equal to
&#10878;greater than or slanted equal to
&#8807greater than over equal to

不等号の実体参照


[1] 【参考】The Chicago Manual of Style Online, 12.23: Breaking displayed mathematical expressions

お読みいただきありがとうございます。気が向いたらまた遊びに来てください。

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